新潟の冬を告げる風物詩、塩引き鮭の寒風干しです。
今年も我が家の軒先に、目の前の日本海(地元野積地区の沖合)で獲れた
大きな2匹のカナ(オス)が吊るされ、寒波による冷たい北風を浴びて、
ゆらゆらといい感じに日々旨味を増しています。
全国の各地域ごとに食文化が豊かな日本では、
それぞれの地域で新年を迎えるための特別な郷土料理や縁起の食べ物があります。
そのひとつ、沿岸部の地域で年を取る(新年を迎える)ために欠かせないのが
「年取魚(としとりうお)」です。
北海道は新巻き鮭、東北では真鱈、カレイ、ハタハタ、
北陸では寒ブリなどが有名ですが、新潟の年取魚は「塩引き鮭」です。
「北海道の新巻き鮭とどう違うの?同じ塩鮭じゃないか」
というギモンが浮かぶ方もおられそうですが、
新潟の塩鮭は、何度も塩で巻いたあとに数日間‶塩抜き‶をして
さらに軒先に吊るし「寒風干し」をして旨味を引き出し熟成させてようやく完成です。
鮭の消費量が日本一の新潟県。(ちなみに酒(日本酒)の消費量も日本一です。私も貢献?)
縄文時代にはすでに鮭を食べていたそうです。
今年は、早くから大寒波が押し寄せ(あの関越道の)連日の低温と悪天強風にみまわれ、
寒風干しの鮭にとってはまたとない‶ベストな気候‶でしたので、
いつもの日数の半分で塩引きが完成、
住職の夫の手によりさっそく切り分け作業をいたしました。
(アゴを突き出した恐ろしい顔がカナ(オス)の特徴。塩引きは身が厚く脂のあるカナが上等)
頭を落とし、半身にして3枚におろします。
包丁にねっとりと絡みつく身。なかなかの熟成度。色も質も申し分ありません。
1匹あたり20分ほどかけて切り分けました。なかなかの重労働でした(私は見ているだけ)。
ちなみに「ひと切れ」がこれくらいの大きさ(下駄サイズ)はないと、まったく物足りませんね。
2匹分の切り身を、大晦日の年取魚用、身内用、二人で一年かけて食べる用
に分けて丁寧にパックして冷凍しました。(これは私の仕事)
その日の夜の食卓には、もちろん出来立ての塩引きが登場しました!!
見てください。この飴色と表面の艶(つや)。身をはがすと糸を引きます。
寒風干しをして熟成したという証です。風味もすばらしい。
ただの塩辛いのと違い旨味が凝縮されている、新潟が誇る郷土料理‶本物の塩引き‶です。
白いごはんが何杯でも食べられる恐ろしいお魚です。
住職が頭や中骨などを使って、酒粕をたっぷりといれた「ガラ汁」も作ってくれました。
村の檀家さんにいただいた大根と人参と酒粕(さけかす)を使い、
中骨も頭も骨までやわらかく食べられるように何時間も煮込みました。
氷頭(ひず)といわれる頭の部分は、ぷるぷるのゼラチン質と脂が
豊富でとてもおいしい部位です。コラーゲンがすごいです。
晩酌のお酒は酒粕と同じ銘柄の越乃寒梅で決まり。
酒粕で体もポカポカ、
寒い越後の冬に負けてたまるかです。
ごちそうさまでした~。
ということで、
今年も一年間「おてら通信」を読んでくださりありがとうございました。
未知のウイルス襲来でなんだかとっても世界中が大変な一年でしたが、
西生寺としては今年は「12年に1度の大切な行事」(即身仏御衣替え・御本尊御開帳)
を2つも抱えた‶特別な年‶でもありました。
不安もありましたが感染予防に努め、無事に終えてだっくらいたしました。
私の‶今年一番‶はやはり「西生寺ホームページのリニューアルを果たした事」でしょうか。
今年の年越しは、ほとんどの方がいつもとは少し違うかもしれませんが、
(我が家も身内が誰も来ない「初めての夫婦水入らず」でびっくり)
どうぞ皆さま良いお年をお迎えください。
(今年秋田より我が家に集団移住をした川連こけしの皆さん)