毎年「水子地蔵尊エリア」脇の杉の木に巣を作って
子育てをするつがいのカラスが今年も無事に2羽のひなをかえしました。
ただいまひとけのない早朝や夕方の境内で親子4羽でにぎやかにトレーニングを実施中です。
一見すると真っ黒のただのカラス。
親鳥なのか子供なのかの見分けがつかないほどに成長した子ガラスですが、
こうやって大きな口をあけてガーガーと鳴きながら餌をねだると口がまだ赤いので分かります。
大きな屋根の「客殿」最上部にある鯱(しゃちほこ)まわりもカラス一家のお気に入りのくつろぎ場です。
昔、ここの園子ママがこうやって客殿の屋根にカラスが止まっていると
「不吉だ。何かある…」とよく言っていました。
餌をねだっている子ガラスのシルエット。必死さが伝わってきます。
西生寺客殿の「鯱(しゃちほこ)」初公開!
しゃちほこは、尾は天を向き頭は虎で体が魚という‶架空の動物‶だそうです。
ちなみにタイ北部のランナー様式の仏教寺院では「バンダイナーク」という架空の動物がいます。
私は一時期このユニークなバンダイナークにハマり、
訪れるお寺でバンダイナークの写真ばかり撮っていました。
こんなところで役に立つとは…
(大きく開けた口からもう1頭を飛び出させている側の君が好き)
話は戻って
当時、園子ママはこうも言っていました。
「今日はカラスの鳴きが悪いから誰か亡くなり‶告げ‶が来るかもしれない…」
「告げ」とは、檀家さんのお家で身内が亡くなると、
親族が菩提寺に直接出向いて「亡くなりました」と報告することです。
電話がなかった時代はこれが唯一の伝達手段でした。
今でも風習として「告げ」はありますが、第一報は「電話」に取って代わられました。
私が嫁いだ頃(30年前)の「告げ」は深夜に来ることもあり、そんな時は長老さまと園子ママが
飛び起きてくれて庫裡と玄関の灯りをつけて告げが来るのを待っていたものです。
ごくごくたま~に亡くなった張本人が「告げ」に来る時もあります。
この場合、身内からの「電話」よりも菩提寺が先に知ることとなり、
「方丈さま何で知っていなさる…」
「さっき本人が来なしたてばね…」
となります。
おてらの世界では「カラスの鳴きが悪いから…」的な迷信が他にもあり、
『白衣を着た人がさーーーっとお堂の中を駆け抜けていった…』
『誰もいないはずの本堂(位牌壇)で人の気配がする』
は、わりとどこのお寺でも聞く話です。
墓地に囲まれて暮らし、
仏さまを介して「あの世とこの世をつなぐお手伝い」をしている私たち寺族は、
そういうのにすっかり慣れてしまっているので、
‶コワ~い霊‶というよりは「どこかのお宅のご先祖さま」という意識が強いです。
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ということで8月になりました。
(メコン河と睡蓮の花)
8月は亡くなった方を一番身近に感じられる月ではないでしょうか。
「終戦の日」もありますしご先祖さまが里帰りをする「お盆」もあります。
お盆の始まりとされる8月1日は当山でも「新盆会(あらぼんえ)」が開催されました。
(今年の新盆会法要の様子)
「新盆会」とは、初めてお盆を迎える新参者のご先祖さまが
「無事にお盆の里帰りができますように…」
という法要です。
米の入った「盆袋」などのお供えモノをしてお経をあげてご先祖さまにエールを送り、
‶長い旅の道中、迷わずスムーズにお家に帰省できるよう‶サポートをするのです。
何不自由なく暮らしているご先祖さまたちが特別感を持って
毎年めちゃくちゃ楽しみにしている、あの世の一大イベントが「お盆」です。
そんなご先祖さまをお迎えするために「お盆の準備」や「お墓参り」をする私たちですが、
今年もいつも通りの帰省やお墓参りは難しいという方も多いと思います。
でも大丈夫です。
今年もやっぱりできることをすれば良いのです。
ご先祖さまが滞在する「お盆の期間」(8月13日迎え盆~16日送り盆)には、
ご先祖さまを意識してそばに感じたり、話しかけたり、思い出話をしたり、美しいお花を飾ったり、
故人の大好物を食卓に用意したりするだけでもご先祖さまはとても嬉しいものなのです。
「いつもお守りいただいてありがとうございます」という感謝の気持ちとできることをして、
わくわく気分で里帰りをするご先祖さまをおもてなしいたしましょう。
(お盆の里帰りのあいだ、ご先祖さまの居場所となる「精霊棚」)